二冊の本についてのメモ



『既にそこにあるもの』 大竹伸朗

  『既にそこにあるもの
   大竹伸朗

  四六判・上製・333ページ
  1999年7月刊行
  本体価格 2000円
  ISBN978-4104310012
  新潮社


『既にそこにあるもの』の 25~30頁から引用

 「夜、アトランタに着くと、空港には二人のスタッフが迎えに来てくれた。僕らはまだ開いているバーへ行き、まずはギネスビールとハンバーガーでこれから始まる本製作をスタートした。
 二十四歳の青年が質問しだす。
「どんな本がつくりたい?」
「まだ考えてないけど、最低で最高の本をつくりたい」
「日本人は印刷の正確さに厳しいけど、僕のまわす一色機ではどうしても日本の機械のようなコンマ数ミリの版ズレまで防ぐことはできないんだ。キミはモアレや版ズレについてどう思う?」
「僕が印刷物で一番刺激を受けるのは、予想外の版ズレやモアレだからキミは僕にとって最高の印刷工だと思うよ」

   [中略]

試行錯誤の末、僕は四色分解をすべてカラーコピー機でやる事にした。カラーコピーの色分解モードを使い、絵一点につき四色分四枚ずつのモノクロコピーを取り、それを本の頁サイズに調整し、リスフィルムに一枚ずつ焼きつけ、それを製版するという方法である。この方法は絵の複写代、色分解代(コピー会社の協力)、フィルムと版への焼きつけ代(アシスタント作業)を大幅にカットできるが、最大の欠点は通常のオフセットの製版とは比較にならない程荒く、オリジナル再現からはかけ離れてしまう点だが、僕にとっては逆に日本での正確さやクオリティーに対する考え方を一から考え直させてくれる最高の方法になった。

   [中略]

 結局、アトランタには、二ヶ月半滞在してイメージ制作も含め原稿を上げ、完成本が一冊宇和島に送られてきたのは、オリンピックも七ヶ月前に終了した九七年の冬であった。本を一冊つくるのに一年七ヶ月かかったことになる。やっとの思いで本を手にした時、アトランタの暑い日々がハンバーガーとギネスの味と共にカーッと蘇った。その本は僕にとって「自分の本」という意識を超えて、偶然出会った人々すべての情熱の固まりに思えた。[中略] 頁をめくっていると、一色機のみを使いすべての頁をたった一人で刷り上げたアシスタントのチャドが、ハンバーガーを咥(くわ)えながら色校を手にスケボーで通過する音が聞こえる。」
 
 
   * * *


『紙の本が亡びるとき?』 前田塁

  『紙の本が亡びるとき?
   前田 塁

  2009年12月刊行
  四六判・並製・286頁
  本体価格 1900 円
  ISBN978-4-7917-6531-7
  青土社

詳しくは → 【青土社
 
一昨日、読み終えた本。
ざっと読んだだけなので
もういちど読み返さないとならないでしょう。

『既にそこにあるもの』と並行して読みました。
今さら=今ゆえに、ナイーヴなことを
あえて考えてみる=試みてみるのも
おもしろいのではないかと思います。

「ナイーヴなこと」とは、
『紙の本が亡びるとき?』と
『既にそこにあるもの』の両書を指します。
皮肉や反語で言っているのでは
ありません。誤解しないでね。
 
 
 
 

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