志村ふくみ 『一色一生』










        志村ふくみ『一色一生』






















『カヴァイエス研究』を読みながら、次の本のことを
思いだす。世阿弥『風姿花伝』。そして
志村ふくみ『一色一生』。
「一色」といっても、どれひとつとして同じ色はない。



「 私の場合には色というものは、[・・・]

自分で工夫して色を掛け合わせることはないのです。

具体的にいえば、一つの植物の最もよい状態の時に

採集し、それを又一番いい状態で煮出し、

引き出していく―――。それを繰り返していくうちに、

経験によって少しずつ複雑な色も、純粋な色も、

自分の心に副って出てくるように思われます。

 [・・・]

 よく私は若い人たちと、小倉山あたりに

いろいろな植物を採集にまいります。

ある時は桜を伐っている方に出会い、

それをいただいて、みんなでかついで帰り、

皮をはいで染めましたところ、

花がすみのような美しい桜の色が

そのまま出ました。しかし同じ桜でも

咲く前に伐ったものはいくらか赤みのある桜色になるし、

しばらくおくと、あの優美なほんのりした紅色の

出ないこともあります。また木の性質、

伐られた状態などにもよって、

実に濃[こま]やかな色の変化がみられます。

それを自分なりに受けとめて、

桜なら桜の潜在的な美なり力なりが表現できれば

うれしいです。」[講談社文芸文庫版、pp.56-57]

   
   
   
   
   
   

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

洛北出版

洛北出版
http://www.rakuhoku-pub.jp/

最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード